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世迷言

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☆★☆★2015年03月02日付

 「打てば響く」という反射的即応体制は公的私的を問わずサービスの要諦だが、我が国では当たり前のことが海の向こう側では当たり前でない国の方がむしろ多いようで、そういう点でも日本人に生まれて良かったと思う小生である▼手紙を出せばきちんと届く。荷物を出せば指定期日にキチンと、指定しなくてもまず遅延はない。こういう配達、配送システムが完璧に近い形で整備された恩恵をありがたく思うこの頃で、これは民間の必死な競争が生んだ必然がやがて官をも抱き込んで、世界に冠たる「デリバリー(配送)王国」を作りあげたのである▼実は必死な競争が生まれるまでは我が国も「慢慢的(マンマンデー=中国語)」つまりなあなあが幅を利かせていたのである。民営化するはるか昔の郵便局は荷物を出すにも、やれ紐をかけろ、包装をし直せ、荷札をつけろと注文をつけられ、どちらが客か分からなかった▼民営化してJRとなる前の国鉄も同様で、大きな荷物を持って乗車するには「託送手荷物」用のチッキ(チケット、チェックがなまった日本語)が必要で、上京のために駅の窓口で布団と柳行李を預けた思い出のある当時から今を見たら、荷物を自宅に取りに来る、自宅に届けてくれるという現代は夢のようである▼どこの国もまして先進国と呼ばれる国ではこんなサービスが当たり前と日本人は思うが、そうではないと数学者の藤原正彦さんが週刊誌に書いていた。読んで唖然としたが、いい意味で日本の常識は世界の非常識でもあるらしい。

☆★☆★2015年02月28日付

 人の人工多能性幹細胞(iPS細胞)から軟骨を作る実験に京都大学の妻木範行教授らが成功、4年以内に臨床応用を目指すという。安全性の確認などの課題は残されているが実用化されれば再生医療の発展に大きな弾みとなろう▼京都大学の山中伸弥教授が人間の皮膚細胞から作製に成功したiPS細胞は、さまざまな再生医療の可能性を広げるものと世界中から期待されているが、実際、理化学研究所の高橋政代プロジェクトリーダーら研究グループが目の難病である「加齢黄斑変性」の治療のため初めて人体に移植し成功、世紀の発明の素晴らしさを証明した▼続いて妻木教授らが作製に成功したのは膝などの関節の「軟骨組織」で、スポーツでのけがや交通事故などで関節を痛めたり、加齢にともなう変形性膝関節症などに悩む人々にとって待ちに待った朗報となる。というのも、正常な部位の軟骨組織を切り取って増やし患部に移植するこれまでの治療法では十分な量の細胞を準備するのが難しく、また軟骨を切り取るのと移植するのと計2回手術が必要だったがiPS細胞から作った軟骨組織を使えば1回で済む▼臨床応用に向けた最大の課題は安全性で、さらに移植した軟骨組織が長期的に安定して有効性を保つかどうかなど検証に時間がかかるため、実用の可否は4年以内という実験検証を待たねばならないが、一歩前進したことは確かだろう▼色々な治療にiPS細胞が果たす新たな可能性が今後次々と提示されるはずだ。素晴らしい時代となった。

☆★☆★2015年02月27日付

 短期間に世界中でこれだけ有名になった人もそうあるまい。フランスの経済学者トマ・ピケティ氏である。その著書「21世紀の資本」は各国で出版され超ベストセラーとなった。資本主義社会で拡大する格差を論じた内容だかららしいが、では格差解消のために一石を投じる効果はあったのだろうか?▼現代版「マルクスの資本論」といった評価もあるほどの同書は、日本語訳で608ページにも及ぶ大部にもかかわらず、すでに15万部余りの売れ行きだという。学術書など5、6ページも読めば睡魔に襲われる小生にはとても読破できそうにもないのではなから購入する気などなかったが、15万部とはあだやおろそかな数字ではない▼それは現代人が格差というものに無関心であり得ず、この格差解消、是正のためにどのような処方箋があるのかとその具体例を欲しているという証左なのであろう。この格差はいかなる国、いかなる体制にも厳然と存在し共産主義をもってする中国ですら、いやむしろこの国がいま最もその拡大に悩んでいるという事実が、病根の深さを物語っていよう▼読まずに内容を論ずるわけにはいかないが、メディアの抄訳を見ると、格差というものをデータ化し、科学的に検証、分析した上で、是正のために富裕層への累進課税という「療法」を示したところが独創的だったようである▼が、格差の解消はむろん、是正についても資本主義体制下ではおろか、空想的社会主義体制下でも困難である以上、自分で儲けるしかないと小生思うのである。

☆★☆★2015年02月26日付

 国宝や重文の修繕には原則として国産漆を使うようにと文化庁が決めた。国産の7割を生産する浄法寺漆の産地、二戸市では文化継承の弾みになると期待していると昨日の岩手日報が報じている▼漆の英語名が「ジャパン」と国名の由来にもなっているように、我が国と漆は切っても切れない関係にある。だからこそこの漆を使った文化財が国宝や重文となって大切に保存されているのだが、国内流通の約95%を占める中国産の安さが魅力となって修繕には多くの場合、国産3中国産7の比率で混合使用されるようになっているという▼なにせ国産の価格は中国産の4、5倍とあって混合使用はやむを得ない場合もあるが、しかし成分上国産と外国産では微妙な差があるのは当然で、やはり修繕には国産を使うべきと以前から検討していた文化庁は価格差を補う財政措置を講じて懸案の解決に踏み切った▼浄法寺塗や秀衡塗などの高級品には及ぶべくもないが愛着のあるわが家の汁椀もかなり光沢を失ってきたので買い換えようと思い立ったのが東日本大震災の後のこと。地元では買えず内陸まで出かけてようやく手に入れた▼値段からいっても中国産だろう。最初こそ見かけは良かったが半年もすると内側の漆が剥げてきた。本物と否との差を見せつけられた思いだった。古い椀は今もしっとりとした質感を保っている。瀬戸物の修繕には金継ぎという技法があるが、これに使われる漆はボンドなど及ばぬ接着力を持っている。実に不思議な樹液というべきだろう。

☆★☆★2015年02月25日付

 日常の些事に喜びを見つけることが何やら楽しみになってきたのは小生の一大変化というものだろうか。若い頃はそれが強い刺激を伴うことが条件だったのだが、今やそこから「解脱」し「日々是好日」とようやくわきまえる歳になったようである▼以上の心境になったのは先日のことである。持て余していたごぼうの調理法を考えていたら「きんぴらごぼう」という古典的料理が頭をかすめた。好き嫌いはない方だが、「きんぴら」と「ひじき」の二つには食指が動かなかった。要するに味が素っ気ないからである▼辞書を引いて「ひじき」には「鹿尾菜」というあて字があることを初めて知ったが、海草=養毛効果という連想があるのか家人がしきりにすすめるのに耳を貸さなかったから禿頭となったのは自業自得というものだろうか。きんぴらの方は出されたら拒まない程度で、これがなぜ「国民食」なのか理解が及んでなかった▼なのに、突然作ってみようという気になるのが人間の不可思議なところ。レシピを見ておどろいた。我が屋のそれは具が文字通りごぼうとにんじんだけなのに対し、牛肉や糸こんなど具沢山ではないか。これなら食欲が忌避するわけがない▼それにしても水気がなくなるまでじっくりと蒸し煮するとは思わなんだ。なるほどレシピ通りの具材なら味がしみてうまみを増すはずである。おかげで何十年にもなる誤解が解けてごぼうを持て余す不幸から解脱し、新たな楽しみを見つけた。「のり巻き」もやっと成功、これも嬉しいね。

☆★☆★2015年02月24日付

今は亡きテレサ・テンの歌のように「時の流れに身をまかせ」るのは一つの生き方としても、フーテンの寅さんじゃないが「国がそれをやっちゃおしめぇよ」。果たして一時が万事その時々の難題を先送りしてきたツケが回ってくる実例を国民も政治家もしっかりと見つめ直す頃だろう▼韓国が不法占拠を続ける竹島の返還を求める「竹島の日」を条例で定めた島根県が22日開いた記念式典に政府は今年も内閣府政務官だけを派遣し首相や閣僚の出席は見合わせた。この島を「独島」と呼んで固有の領土と主張する韓国に対し真っ向からけんか腰では臨めないという配慮だが、韓国政府には全く通用しなかった▼竹島が我が国固有の領土であることは歴史的にも国際法的にも明白なのに、韓国によって不法占拠されてそのまま実効支配が続けられてきているのは、敗戦によってすっかりしみついてしまった事なかれ主義の結果だろう▼竹島にしろ尖閣諸島にしろ国際司法裁判所に持ち込んで堂々と黒白を決することができるほどの証拠があるのに、韓国も中国も理屈にならない理屈を並べ、声高に領有権を主張するだけである。もし日本政府が終戦後も一貫して両島の領有を叫び続けて来たなら少なくともこのような事態になることは避けられたはずである▼政務官だけを派遣するのは今年で連続3年となるが、そんな配慮などなんら効果もなく、逆に正当な権利性を薄める負の作用ももたらしかねない。断固として主張すべきは主張する国にそろそろ立ち返るべきだろう。

☆★☆★2015年02月22日付

 脱石油と簡単に言うがそれが至難の業であることはこれが天然資源で、精製コストを含めてもこれ以上低コストの代替品は容易に見つからないからである。だが、たとえ全面的な置き換えは不可能としても今世紀には燃料革命が起こることを期待したいものだ▼福島原発以後発電用の石油、ガス、石炭などの輸入が急増し円安と重なって貿易赤字を大幅に膨らませたこの教訓を、原油安という一時的な恩恵によって見失い喉元過ぎれば熱さを忘れる二の舞を演じてはなるまい。事実、1月に6年振りの安値をつけた原油価格は最近になって反転、この商品が「水物」であることを如実に物語った▼シェールオイル・ガス革命が産油国の市場価格コントロールを崩し、それが原油安の一因となったことはまぎれもないが、しかし決して楽観を許されないのが石油の持つ戦略性である。だからこそ我が国のような輸入国は今後もその「魔性」に翻弄されるだろう。それだけに「脱石油」は国家プロジェクトとしての取り組みが求められよう▼そういう意味で我が自動車産業の努力は評価されていい。それは必ずしも国策への協力云々以前に企業の利潤追求のためだろうが、結果的、間接的に輸入依存率を減らすことにつながろう。そう、低燃費車の投入とあいつぐ開発努力のことを指す▼トヨタは年内に「プリウス」をガソリン1gで40`走るようにし、マツダも新エンジンによって20年内に同程度の低燃費を目指す(日経)ようだ。この競争の「激化」が大いに楽しみである。

☆★☆★2015年02月21日付

 1世紀の7割を見てきたおかげで科学の目覚ましい進歩を目の当たりにし、かつそのお裾分けにあずかってきたことは実にありがたいことだと思うが、各分野でこの先どれほどの技術革新が行われるのであろうか。おそらく生まれたばかりの赤ちゃんが小生の歳になる頃は次元の異なる世界が現出するだろう▼正直、小学生の時代には考えられなかったようなことが現代で実現していることは、すなわち我が想像力の貧困のせいであることを告白しておきたい。むろん手塚治虫さんの漫画「鉄腕アトム」やイラストレーターの小松崎茂さんが描いた宇宙開発時代など、未来を先取りした空想社会は存在していたが、実生活でこれほど多様な発明の恩恵を受けることなど実感できるものではなかった▼白黒テレビ、洗濯機、冷蔵庫が「三種の神器」とされた時代が懐かしい。まさに家庭生活を根本から変える「事件」であり、これらが自宅に招じ入れられた時の感動は今でも忘れられない。やがて電気釜が登場し、しばらくあって軽自動車が普及し始めると日本経済はにわかに活気を呈するようになる▼それ以後を一口で総括すれば半導体が生活のすみずみまで激変させたということに尽きるだろう。現在の便利な生活はこの発明なしにはあり得なかった。こうして携帯電話もデジカメもパソコンも家庭の中に我が物顔で収まっている▼ネット動画で10Kカメラの映像というものを見て驚いた。ハイビジョンの10倍という解像度がこれから何をもたらすか。この先が恐ろしい。

☆★☆★2015年02月20日付

 一家言などむろんのこと、座右の銘すら持ち合わせぬ無粋、無骨な人間だが、ただ一つこれだけは人生に有用な指針であるまいかと思うのが吉田兼好法師の言葉「少しのことにも、先達(案内人)はあらまほしき(あってほしい)事なり」である▼600年以上も前に著されたという「徒然草」がいかなる評価をされてきたかは知るよしもないが、古典としていまも名をとどめているのはそれだけの存在理由があるからに外なるまい。とは申せ小生が知るのは高校の授業で習ったごく一部だけで、しかしなぜか心に残っているのが第五十二段の「仁和寺にある法師」の物語なのである▼石清水八幡宮に詣でた仁和寺の僧が、麓の寺社だけを拝んで肝心の本宮を見ずに帰ってきてしまった。みんなが山(本宮のある)へ登っていく理由が分からず、拙僧は神様を拝むだけが目的なのでそこまでしなかったと後で周囲に話したから世間知らずがバレてしまった▼小生などまさにこの僧と同じでこれまで犯した失敗と後悔は数知れず。ゆえにこの言葉だけはしっかりと心に刻み込んできた。さて、最近の新たな先達は「のり巻きの達人」である。毎日この作業に挑戦しながらまともに出来上がったことがない。これはプロに聞くのが最上と考えた▼案の定、そのコツを一瞬にして知ることができた。太巻き用の幅広い海苔で細巻きを作る愚、丸めようとして力を入れる愚、海苔と米と水分との関係を弁えぬ愚。すべてが氷解した。これが先達の必要な十分過ぎる証拠である。

☆★☆★2015年02月19日付

 「ああ、またやってしまった!」と後悔する前に、念には念を入れるべきなのだが、それを怠るからしっぺ返しを食うことになる。小欄を担当するようになってその「ああ」を何度繰り返したことか。もうすまいと思いつつも失敗は続くだろう「人間だもの」と弁解したくはないが…▼昨日の小欄で「見る見る間の円安に」と書くべきところが「円高」となっていることに気付き愕然とした。意味がまったく反対になるからである。組版の部署からプリントされて出される校正を見てもまったく気付かなかった。つまりうっかりというよりも、思い込みが勝手にパスさせてしまったのである▼こういう場合を想定して第三者による校正、校閲という作業が存在するのだが、こちらも気付かぬ場合が当然ある。後から生まれてくる人間がどれだけ力量、進歩を示すか分からないからその価値はおそるるに足るという意味で「後生畏るべし」という格言があるが、それをもじって「校正恐るべし」としたのは週刊朝日の名編集長だった扇谷正造氏だった。それは経験に根ざした発言だと思う▼貿易に関する為替の概念が厄介なのは、それがドル建てで行われているからであろう。ドルが基軸通貨になっているからこそで、これが円建てなら円高は有利、円安は不利とすぐ理解できるのだが、その逆を考えなければならないのが誤解の元となる▼輸出企業ならともかく、円高は原料などを安く輸入できるので大歓迎という意識が思わず円安を円高に買えてしまったのかもしれない?


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