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世迷言

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☆★☆★2014年08月01日付

 さすが「白髪三千丈」の国。やることがデカイ。中国で今吹き荒れる綱紀粛正の嵐の中で汚職の容疑が固まった前政治局常務委員の周永康氏(71)と家族の資産が押収されたが、その総額がなんと約9000億元(日本円で約1兆5千億円)というのだから▼習近平体制が発足して以来、目下最大の政治運動となっているのが反腐敗キャンペーンで、「ハエ(小物)もトラ(大物)も同時に叩く」という習政権がまず標的にしたのが党や中央の大物だ。いくら腐敗防止を掲げても上から下まで「やらなきゃ損々」となってしまった汚染腐敗体質は一朝一夕に改まるはずがなく、そこでみせしめのスケープゴート(いけにえ)を仕立てる必要があった▼中国石油天然ガス総公司社長なども務めた周氏がヤリ玉にあげられたのは、その立ち場を利用して不正蓄財につとめたという公式見解は実際その通りだとしても、温家宝前首相と家族の不正蓄財や、習主席の家族にまつわる同様の噂などが物語る通り、誰もが脛に傷持つ身の国だからここは叩きやすい人間が叩かれたと解釈すべきだろう▼中国の一党独裁は共産主義青年団(共青団)と太子党という二つの閥で均衡が保たれているが、そのいずれにも属さない高級幹部がキャンペーンの犠牲になっている。それはまさに権力闘争の結果であり、哀れ水に落ちたのが周氏ということだろう▼日本という敵をこしらえて国民の不満をそらした後は内なる敵の首級を上げる必要があった。しかし国民はすでに茶番を見抜いているはずである。

☆★☆★2014年07月31日付

 日本が今日あるのは仮名の発明があったればこそだろう。仮名なしにこれほど社会の平準化はかなわず、生産性も向上しなかったことは明らかだからである。これは世界に誇れる貴重な遺産だと思う▼と思うに至るのはテレビなどで中国や台湾など漢字圏の情景にふれた時で、漢字だけの世界は識字率の向上に大変な労力を要すだろうと同情を禁じ得ない。その点、日本では漢字を知らなくとも仮名で用を済ませることができるのは大変重宝である。漢字という表意文字に仮名という表音文字を加えたことでどんな字も読め(ルビによって)、音訓を理解できるのはすごいことである▼渡来してきた漢字を覚えるのはさぞ大変なことだったろう。読むのはともかくどう発音するのか?最初は万葉仮名をあてていたが、それが片仮名、平仮名と変化していったのはまさに必要の産物だったからだろう。こうして漢字を温存したのは正解だった▼「きしゃ」が「記者」か「貴社」か「汽車」か文字を見ればすぐわかるが、音だけでは判断しにくい。同音異義を峻別するには漢字にしくはないのである。その漢字を捨てて仮名だけにしたらどうだったろうか。歴史研究も古典の理解も大混乱していたはずである▼「金正恩」に「キムジョンウン」、「習近平」に「シージンピン」とルビを振れるのも日本に仮名があってこそ。コカコーラに「可口可楽」とあてても、同一文字が同一発音とは限らない中国は苦労しているはずである。また漢字を捨てた国もさぞや今苦悶しているだろう。

☆★☆★2014年07月30日付

 世界的な料理王国が沿岸国であるという点で共通しているのは、魚の調理に絶妙な舌が要求されるからだろうか。つまり肉だけでなく海産物という豊富な食材を提供されるからいやでも調理法が豊富になる。それにしてもプロの舌には舌を巻く▼魚料理がどうしても苦手で、さばく、おろすという作業がからっきしダメだ。慣れもあるだろうが、いくら本と首っ引きしても実際に教えられたようなわけにはいかないから、どうしてもおっくうになり、当然進歩しない。だからサケやカツオのような大型になると身よりもアラが多くなる始末▼刺身はともかく、煮る、焼くという調理法もまた難しく、プロはどのようにしているのかと料理の虎の巻を調べてもかゆいところに手が届くような解説にはまずお目にかかれない。先日はかねてからの念願であった舌平目のムニエルに挑戦したが、ウロコも取らず皮も付けたままにして見事失敗▼そんなことを本には書いてなかったからだが、すべてに「先達はあらまほしき」なりと兼好法師の心境となった。味だけは抜群にうまくいったのに…。サバの味噌煮は何度か試して形も崩れず、味も染みてどうやら合格点に達したが、煮物はかなり奥が深そうだ▼先日はその煮物についてプロの技を教えられた。水の代わりに日本酒で煮るという点、もったいなくて小生にはできるか(調理酒なら可でも)疑問だが、白身は鍋が煮立ってから、背の青いいわゆる光り物は冷たい状態から煮ると知って、味もともかく煮姿も大事と教えられた。

☆★☆★2014年07月29日付

 人生には奇跡的なことがまれに起こる。まれに起こるからこそ奇跡的なのだが、実際にそうした実例に出くわすと、何事もすぐは諦めずそこに奇跡が生まれる余地を信じることも大事ではないかという気にさせてくれる▼高校野球がしばしばその奇跡を起こすことは何度か体験しているが、高校球児たちがその「まさか」を演じることができるのは、心身共に可能性をたっぷり秘めていればこそのことであろう。つまりそれが「伸びしろ」というものであり、逆境にあってもそれを一遍にはね返すエネルギーがどこかに温存されているからかもしれない▼夏の石川県大会決勝でそのまさかが起こった。小松大谷対星稜の対戦は、序盤から小松大谷が圧倒的に責め立て、1、2、4、5回で8点を叩き出した。甲子園大会に名を残す簑島との18回にわたる死闘で全国に名が知れた名門星稜もこれで力尽きたかに見えたが、9回裏信じられないような大逆転劇が用意されていた▼8点を追う最終回の反撃チャンスは、その反撃をおそらく星稜の選手も応援団も地元も半ば諦めかけていたに違いない。ところが、そのワンチャンスに勝利の女神がほほえんだのだから、運不運は最後の最後まで分からない▼この回エース岩下が放った渾身の一打が場外へ飛び2点を得点したのが導火線となり、土壇場で打者13人が8長短打を集める猛攻でなんと逆転サヨナラ勝ちをしたのである。まさに奇跡にふさわしいが、しかし29年振りの甲子園出場をフイにした小松大谷が不憫に思えてくる。

☆★☆★2014年07月27日付

 航空機事故というのは不思議と連続するもので、海外旅行のキャンセルが世界中で増えているのではないだろうか。しかしこれは単なる偶然だろうから、そんなことは恐れずせっかくの機会を楽しんだ方が得というものだろう▼マレーシア航空機がウクライナで撃墜されて騒然となっている最中、今度は台湾の復興航空機が墜落、乗客乗員58人中48人が死亡するという事故があった。天候が悪い中の着陸で操縦に失敗したのか、なぜ着陸を強行したのか原因は不明だが、プロペラのコミューター機だから、非力であったことは確か▼その翌日に今度は西アフリカ・ブルキナファソからアルジェリアに向かっていた乗客乗員116人が搭乗のアルジェリア航空機が墜落するという事故があったから、不思議な連鎖が取り沙汰されるわけだが、しかし同じ年に連続発生するというケースはここ数年なかった▼連続していたのは相当昔のことで、そんな記憶はもう薄れているが、たまたま連れ合いと海外旅行した頃はそんな連続事故があったのだろう。2人とも「気にしない、気にしない」と取り合わなかった思い出がある▼ここ数年、連続発生がなかったのは、飛行機そのものが改善され、進歩して「フェイルセーフ(多重安全機能)」がより強化されてきているためだが、しかし絶対ということはあり得ない。まして空の上のことである。「あんな重い物が空を飛ぶなんて信じられない」という飛行機嫌いもいるが、現に飛び、車より事故の確率が超低いことも事実だろう。

☆★☆★2014年07月26日付

 金持ちはいつまでも金持ちにあらず。貧乏はいつまでも貧乏にあらず。そう実感するにいたるこの変化はまさに隔世の感がある。貿易黒字がたまりにたまって世界から妬まれたこの国がいまや貿易赤字国に転落したというのは「盛者必衰の理をあらわす」そのものだ▼財務省が発表した2014年上半期の貿易収支は、7兆5984億円の赤字となって、1975年以降半期ベースで最高を記録した。東日本大震災が起きた2011年上半期以降、赤字は7期連続で、赤字額も拡大しているという状況をどう理解したらいいのか、国民の多くは「ああそうか」ぐらいにしか見ていまい▼それは日本と言えば貿易黒字が膨らんで「金余り」だ「儲けすぎだ」と怨嗟の的になってきた国なのだが、「金持ち喧嘩せず」で、批判も非難も馬耳東風に聞き流してきたその習性がいまだ尾を引いているためだろう。つまり生活実感とかけ離れているため、「何をくよくよ川端柳」と達観もできるのだ▼資源小国なのに貿易立国で食べて来た国が赤字というのはむろん輸出不振が原因ではない。円安なのに期待したほど黒字が増えないという一面も無視はできないが、原発事故で代替の火力発電に依存率が高まり、その燃料である液化天然ガスや原油の輸入量が激増したことが転落に拍車をかけた▼輸出企業は円安が追い風となって業績を向上させているから、この辺でそろそろ円高にふれてもいいのではないかと、ずっと貿易黒字だけを見てきたせいかそんな期待もよぎるこのごろだ。

☆★☆★2014年07月25日付

 思った通りの展開だった。毒入り餃子事件以後中国からの食品輸入に日本中が神経質になったはずだが、喉元過ぎれば熱さを忘れる国民性は「要警戒」のスイッチを切ったらしい。ところがどっこい、あちらでは商業道徳にも「賞味期限」があったのだ▼上海の食品会社が使用期限切れの鶏肉を日本のマクドナルドやファミリーマートなどに輸出していたことが判明、しかもその会社は床に落ちた肉をそのまま拾って生産ラインに戻したり、腐った肉まで混ぜていたりしていたことが上海のテレビ局の潜入レポートで公になった。腐った肉を示して従業員が「食べても死ぬことはない」と笑ったというのだから、ばれなければよしというのが社是なのだろう▼中国の信用を大きく失墜させた毒入り餃子事件後、中国政府が安全衛生管理に力を入れるようになったから、もう大丈夫だろうと日本の食品輸入関係者は考えたであろうし、そう信じたから今月までの1年間に同社から約6000dもの食肉加工品が輸入されたのであろう▼この会社はHACCP(ハサップ)という国際的な衛生管理手法も導入しており、輸入側はそれを頭から信じていたはずであろうことは疑いない。しかしそれは日本の企業倫理感に照らしてのことであり、彼の国には別の価値観があることを見逃していた▼政府がいくら信用回復のために「政策」を打ち出しても下には「対策」がある。上が腐敗していれば下も腐敗し、商品までも同調するのは避けられない。この国は解体して出直すべきだ。

☆★☆★2014年07月24日付

 今まで仮設で営業していた店が本設のため取り壊されて、地ならしされている現場を眺めながら新しい店がどのような形になるのかを想像するのは楽しみだ。遅い遅いといわれながらも復興が着実に進んでいる証拠が次々と提示されているのは事実だろう▼商売にはまず店という拠点が必要だが、被災したその年は仮設での営業をしたくても土地がなく、その確保が最大の課題だったが、そのメドもついて翌年、翌々年あたりからあちこちに商業集積が登場し出し、人々の再生、再建の意気込みを感じて戦後日本に見た日本人の不屈な魂とひたむきさを再認識させられている。それは今も変わらない▼だからこそ、再建の動きが余計気にかかり、地価高騰、資材高、人手不足などの何重苦を乗りこえて新たな出発をしようというその動きに対していやが上にも関心を寄せざるを得ないのである。焼け跡にバラックが建ち始めた終戦直後とは異なり、大震災被災後の本設は新しい街を育む萌芽なのだから、なおさらだ▼東に造成中の土地があれば「何ができるんだべ」と興味津々となり、西に建設中の建物があれば「いつできるんだべ」とこれまた関心を寄せるのは戦後復興の既視感が身にしみているからにほかなるまい▼いずれにしても、震災前は考えられなかったような劇的変化が浸水区域に起こり、予想もしなかったような街区ができあがっていくのはもはや時間の問題なのである。そういう意味でこの年寄りには日々是新たな感慨を時空が提供してくれるのである。

☆★☆★2014年07月23日付

 「語るに落ちる」とはまさにこのことだろう。ウクライナ東部のドネツクで撃墜されたマレーシア航空機の墜落現場を訪れた全欧安保協力機構(OSCE)監視団に対して、親ロシア派武装集団が調査を妨害したり、機体や遺体を勝手に収容したりしているのは、「証拠を隠滅しているぞ」と白状しているようなものだからだ▼「問うに落ちず語るに落ちる」というのは、ひた隠しにしていても何かの拍子に本心をついついもらしてしまうものだという人間の心理をたとえたものだが、撃墜をウクライナ政府軍の仕業だと抗弁する武装集団の主張もその通りの破綻を招いている。もしウクライナ政府軍が撃墜したのなら調査団を受け入れて真相を明らかにすべきが本当なのに▼だが、そうはせず、覆面をして武装をし、調査団を威嚇して現場に立ち入らせないというのはまったく見事な自家撞着というものである。しかもこの集団は遺体から貴重品を抜き取り盗んだクレジットカードをすでに使用した形跡もあるというに至っては「盗人猛々しい」という形容がぴったりである▼武装集団はすでに196人の遺体を保冷施設に移し、墜落当時の状況を探る記録であるブラックボックスを回収しているというから、調査のカギとなる大半を隠してしまったことになり、これでは真相解明が困難になることは明白だ▼ロシアのプーチン大統領は武装集団の後ろ盾になっていることを否定して火消しに躍起となっているが、もう誰もが信じまい。元々信用されない国ではあったが。

☆★☆★2014年07月22日付

 豊田通商が近畿大学と提携してマグロの完全養殖を手がけることになったという報道にわが意を得た思いがする。その研究と実用化で蓄積されるノウハウは必ず他の魚種の完全養殖につながると期待するがゆえにである▼同社は10年からマグロの養殖事業に取り組んできたが、体長5a大の稚魚を外部から購入して、「ヨコワ」と呼ばれる30a大まで育ててから養殖業者に売るだけと、いわば妙味の薄い中間育成だけに甘んじていた。これを卵から人工的に孵化させ育成して出荷用マグロに成長させるというこの事業は水産ニッポンに新たな活路を開くだろう▼世界一のウナギ消費国なのにニホンウナギが絶滅危惧種に指定されてからあわて出したように、消費だけでなく資源の安定と種の保存等にも力を入れる必要性を問われているのだが、同じく世界一の消費国であるマグロもその主要輸入国であるために世界的な乱獲を招く結果となったことが国際的な批判を浴びていることからも「自給自足」が今日的課題となっているのである▼同社では長崎県の五島列島に設けた養殖場で本格的な育成に乗り出し6年後には年間30万匹の稚魚を生み出す計画だ。30万匹の稚魚が確保されれば年間に10万匹の出荷用マグロが確保できる計算といい、いまや「マグロの近大」と評価される近畿大学の技術をフルに活用し、将来海外展開も視野に入れる▼この成功は各種魚類の完全養殖に道を開く可能性が大であり、それがやがて気仙沿岸の養殖振興にも寄与することを願うのである。


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